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沖縄と韓国の米軍基地をとりまく写真展@NY MoMA's PS1

沖縄と韓国。どちらも米軍基地の存在する場所。私は基地のある街には行ったことがなく、いくつかのニュースで知っている程度です。
基地を無くしたいという思いと、基地が無くなったら生活できなくなってしまう人がいるという現実と。米軍による事件もよく耳にする昨今ですが、日本と韓国の写真家によるドキュメント写真の展覧会をアメリカで行う、という今回の企画、ぜひ実際に足を運んでみたいところです(希望)。

---以下、プレスリリースより。

<永続する瞬間—沖縄と韓国、内なる光景>
二人の沖縄写真家と四人の韓国写真家による米軍基地の因果律のドキュメント写真展
< The Perpetual Moment – Visions from within Okinawa and Korea >
Document of Cause and Effect of US Military Bases by 2 Okinawan and 4 Korean Photographers

参加作家
韓国の写真家:イ・ヨンナム、アン・ヘリョン、ノ・スンテック、イ・ゼガブ
沖縄の写真家:比嘉豊光、石川真生

写真展
会期:2004年10月17日〜12月13日 (12時〜18時)※火・水曜日休館
会場:MoMA’s PS 1 Contemporary Art Center
22-25 Jackson Ave at 46th Ave, Queens
PS 1コンテンポラリーアートセンター(アメリカ近代美術館提携機関)
ニューヨークのクイーンズ、22-25ジャクソン通り&46アヴェニュー
※マンハッタンから地下鉄で20分、又マンハッタンにあるMoMAと結んで無料シャトルバスが運行される
電話:(718)784-2084 地図等:http://www.ps1.org/cut/gen.html



関連事業:アーティスト・シンポジウム
日程: 10月19日(火)
時間: 18:00時〜21:00時
会場: Teachers College, Columbia University 
525 West 120th St., between Columbus and Amsterdam
コロンビア大学のティーチャーズ・カレッジ
西120条の525(コロンブス通り&アムステルダム通りの間)
※部屋番号はカレッジの玄関で案内される
電話: (212) 678-8116


写真家集団MAGNUMの創設者の一人アンリ・カルティエ=ブレッソン(2004年8月死去)は写真集のタイトルに『決定的瞬間 The Decisive Moment』(1952刊)という決定的な言葉を残して、プロ・アマをとわず写真を撮るあらゆる人を呪縛している。写真としての決定的瞬間と、事実としての決定的瞬間とはどう違うのだろうか。カルティエ=ブレッソンは「写真としての決定的瞬間」のチャンピオンかもしれない。だが、本写真展<永続する瞬間——沖縄と韓国、内なる光景 The Perpetual Moment – Visions from within Okinawa and Korea>は、社会参加する写真家、あるいは良心の写真家たちの作品をとおして、歴史のある瞬間がいかにして時を超えて持続するか、その因果関係(cause and effect)を明らかにしている。
視覚表現の観点から、本写真展は二つの課題を検証しようとしている。
一つは、ここに展示された事実factの記録としての写真は、見る者をどこまで現実realityに、そして現実を作りだしている複合的な歴史への思索に引き込むことが出来るか。さらには、そこから、どれだけの感情的・理性的な判断と勇気とを誘発して、真実truthと正義 justiceを見きわめる眼を引き出すことが出来るか。二つ目の課題は、ドキュメント写真は現代芸術のパラダイムをもって論じうるものか否か、という誰もが抱く疑問への回答の試みである。現代芸術は現代の現実、現代人の真実を表象する有効で斬新な方法を模索し続けている。事実を基底に置くドキュメント写真は、そのなかでも揺るぎない動機と題材を得ている分野だ。個人のアイデンティティーと世界の現実。ドキュメント写真においては、この方程式がきわめて明解に表出しているとは言えまいか。
フランスの人文主義者アンドレ・マルローは、近代芸術の出発点は芸術と美とが分かれた瞬間だと言い、その例に18世紀にフランシスコ・ゴヤが描いた戦争の凄惨なイメージをあげた。その後、写真技術の発展により、現実を活写する写真が人間の痛み、懊悩、格闘する姿を数多く記録してきたーー人間の愛、歓び、楽しさの記録に加えて。血塗られた反省をこめて「戦争の世紀」と呼ばれる20世紀には、戦闘、戦争、それらに起因する苦悩する人と場所の写真が無数に残された。報道写真、フォト・ジャーナリズムの躍進は不幸にもそうした歴史を背景としていた。スペイン、ロシア、第一次・二次世界大戦、朝鮮、インドシナ、中東、アフリカ、中南米、中欧、東欧、バルカン半島、イラク・・・ 国と国の戦争ばかりではなく、内戦、革命、独立闘争、宗教対立、部族対立など、残酷な戦争の種はつきない。
報道写真、あるいはフォト・ジャーナリズムの世界ではごく最近まで、マスメディアをとおして私たちが目にしてきた写真の多くが、被写体である場所や人々の外部から来たプロフェッショナルが撮影したものだった。スペイン内戦のロバート・キャパ(インドシナで地雷被爆死)、朝鮮戦争やインド独立戦争のマーガレット・バーク=ホワイト(彼女がポートレートを撮影した直後に、ガンジーは暗殺された)・・・ 20世紀の記憶はこれらの視像と切り離せない。だが、この部屋で目にする視像は戦場や戦闘の写真ではない。本国からはるか遠く隔たり、戦闘の行われている前線からも離れた、第三国の領土内に置かれた軍事基地とその周辺を写したものである。日本の領土に組み込まれている沖縄と、朝鮮半島にいまだ分断国家としての存在を強いられている韓国に1945年以来存在する、アメリカ合衆国軍の基地とその周辺住民の生活と苦悩、ときには人間としての喜怒哀楽を活写したものだ。
これらの写真には大きな特徴がある。当事者の目から撮った写真、被写体の内部からの写真であるという点だ。写真機が発明されて150年近くたった今、その場所の、事態の、人々の内部からの眼で撮られたこれらのプロフェッショナルな写真群が、外部者とはことなる深く、重層的な、当事者の歴史の響きのこもった声で、現状を伝えている。写真家たちは、かつてのようにLIFE誌から、あるいはUPIやAFPといった国際的な通信社から派遣されたのではない。自分の場所、その歴史の内部から、今、ここ、を見ている。1945年にもたらされた歴史の「決定的な瞬間」が、これらの場所ではいまだに持続している。その因果律が、みずからの国や場所だけではなく、現代世界の全域に世界規模の不幸な現実として波及していることを、これらの撮影者たちは自覚している。サルトルは「文学は飢えた子供たちを救えるか」と問いかけたが、これらの写真家たちは「写真は私たちを、私たちの世界を救えるか」と自問している。
1945年4月、連合軍が日本にとどめを刺すべく、最南端に位置する沖縄に上陸し、沖縄の非戦闘員を含む15万人が死んだ(住民の四人に一人)。そのなかには、日本軍に命じられて自決した学徒動員の若者たちや、集団自決で互いを殺し合った家族や同窓生たちも多く含まれていた。8月15日、日本は連合軍に対し無条件降伏した。そして9月、朝鮮半島のインチョン港に米軍が到着。36年にわたる日本の植民地支配から朝鮮人民を解放すべく来た米軍。だが、その場に歓迎に集まった朝鮮人民の2名が日本の警官に射殺され、10名が負傷した。「ニューヨーク・タイムズ」紙の特派員Richard E. .Rauterbukは、日本の警官は米軍の指令で発砲した、と報じた。日朝・日韓関係の矛盾を反映した、米軍と朝鮮人民との不幸な邂逅だった。戦後世界の東西の対立(自由主義ブロックと共産主義ブロック)はさらに朝鮮半島に色濃く集約され、1950年の朝鮮戦争以来、朝鮮半島はいまだに分断国家の苦しみを抱えている。
そして沖縄列島でも朝鮮半島でも、60年におよぶ米軍基地の存在が続いている。米軍の戦闘機が、空母が出掛けてゆく戦闘地域は時代によって変わり、兵器も演習内容も変わった。だが、外国の軍事基地がもたらす問題はますます悪化している。周辺民間人の生命、尊厳、そして住環境への悪影響は複雑化している。この半世紀、一瞬の切れ目もなく戦争の辺縁に置かれてきたこれらの場所の人々は、現実の表層の向こうに、歴史の「永続する一瞬」を見ている。「決定的瞬間」は未来へも持続する。それは起こってしまったら止められない。因果律 causalityと正義 justice。事実の具体的なイメージは、人間の悟性と感情にどこまで力を与えることが出来るのだろうか。

{文責=PS1客員学芸員・東京事務所代表 木幡和枝、原文は英文}
by ayya-i10x | 2004-10-03 17:58 | - Exhibition&Event


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